大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)6976号 判決
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〔判決理由〕2、休業損害
認められない。
原告が、訴外岩井商事株式会社の代表取締役であり、月額報酬二〇万円を同会社から支給されていたものであること、しかも、本件事故後前認定の通院期間中(昭和四四年五月末日まで)右金額の支給を受けていたこと、原告の自陳するところである。ところで、原告は、右事故後支給された金員は、前記会社が立替払いをしたものである旨主張する。然しながら、原告本人尋問の結果によれば、「病院に行つてから会社に来て椅子に座る訳ですが、じつと座つておれないので家に帰つて寝床に入つたり、医師の指示で家庭療法を」行つたりして、「通院」するために「社長の仕事を大目にみてもらつて」いるものであり、その通院も、前に認定したとおり、事故後約四カ月の間に四回(尤もその間家庭において牽引療法を行つたであろうことは、昭和四二年一二月一四日前記牽引器を購入している((甲第八号証の一))ところから容易に推測することができる)、その後約一三カ月余りの間に四八回、そのうち四一回(松原診療所)は主として腰部筋痛の治療のためのものであつた。事故当時から昭和四四年一月ごろまで従業員二十数名を擁していた(乙第一ないし第五号証)前記会社における原告の職務内容がどのようなものであつたのか詳らかでないけれども右事情に照らすと、原告が本件事故のため右会社代表者としての事務処理を遂行しえない状態に陥つたものと認めることは困難である。更に、右乙第一ないし第六号証によると、右会社は、前記二〇万円から源泉徴収による所得税三万一、二五〇円その他を控除した残額一六万三、四六〇円を毎月原告に支給したものとして経理上経費として支出処理していることが認められる。このことはいかに右会社が小規模のものであるとはいえ、後日仮りに同会社が原告から立替払いの返済として原告主張の金額(三四〇万円)の支払いを受けたとすれば、たちどころに経理上、その処置に窮する結果をまねく筈であり、右経費としての支出処理が、経理担当者の単なる誤りであつたとは到底言いえないこと、つまり、原告が、本件事故後も従前どおり、その報酬の支給を受けていたことを推認させるに充分である。これに反する甲第九号証は、原告がその本人尋問において、原告の指示に従つて前記会社の誰かが認めたものである旨述べていることからしても、その内容が真実のものであるとは到底認め難く、他に、原告の休業による損害の主張を認めしめるべき証拠はない。さればとて、原告が本件事故によつて、右会社経営のうえで何らの損失もこうむつていないものと断定することはできず、小規模の個人会社であるだけに、むしろ、前認定の症状、治療等が少なからず右経営の面で本来の成績に比して相当の損失をもたらしているであろうことが推測される。しかしながら、それがどの程度のものであつたかについては、何ら主張立証の存しないところであるから、これを後記慰藉料算定の事由として考慮することとする。(中村行雄)